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チリの収穫期:夢が現実になる時(2016年4月「ガーディアン」掲載記事訳)

ワイナリーに運び込まれた収穫したての葡萄は、果梗(茎)から分離され選別されたあと、エスカレーターのような緑色の長いベルトコンベヤーに乗って天井へと向かい、大きなタンクの中へバチャバチャと音を立てながら飛び込んで大きなパープルレッドのプールを作ります。隣のタンクからはポッピングキャンディのようなパチパチとはじける音がかすかに聞こえますが、これは果汁と果皮がゆっくりと発酵しているからです。この光景はまるで、ワイン版『チャーリーとチョコレート工場』を見ているかのようです。

「収穫の時期は本当にクレイジーな状況になります」と語るのは、セラーマスターのパトリシオ・コルネホ氏。「本当にハードに働かなければならないし、チャレンジです。ただ、このチャレンジは楽しい。実際、楽しみです。」

ワイナリーの中は目が回るような忙しさですが、混乱はしていません。どの工程も注意深く監視され、きちんと調整されています。ワインメーカーがワイナリーの中をあちこち見て歩いて回ったり、ワイナリー全体が見渡せるラボの窓から作業の様子を観察したりしているのです。

運まかせで良いワインは造れません。注意深い集中力と、苦労して得た経験が良いワインを造るのです。ピノ・ノワールにおいてはとくにそうです。

ピノ・ノワールは悪名高く気まぐれで、この品種でワインを造ることは非常に難しいとされています。多くのワインメーカーたちが良いピノ・ノワールを手にすることを夢見ますが、その夢を叶えられるのはごく一握りのワインメーカーだけです。コノスルはどのようにして世界最大のピノ・ノワールの生産者になったのでしょうか?良いピノ・ノワールを造る秘訣は何なのでしょうか?

チーフワインメーカーのアドルフォ・フルタード氏がそれを説明してくれました。「ピノ・ノワールのレベルを向上させようと決めた後、私たちはフランスのブルゴーニュへ向かいました。サポートしてくれる人物を探すためです」。彼はブルゴーニュの銘醸ドメーヌ・ジャック・プリュールのマルタン・プリュール氏をコンサルタントとして招聘することに成功し、葡萄畑とワイナリーの双方において、ピノ・ノワールの最適な扱い方を学んだのです。

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「ピノ・ノワールを理解するまでは何年もかかりました。ピノ・ノワールの果皮は本当にデリケートなので、優しく扱わなければなりません。コノスルではオープントップタンクを使い、葡萄を潰す作業は機械ではなく人間が行っています。足で踏んで潰す場合もありますし、金属製の足で潰す場合もあります。」

ワイン造りの歴史が始まって以来何千年もの間、葡萄を潰す作業は人の足で行われてきました。オープントップタンクを利用したワイン造りはブルゴーニュで何世紀も行われてきたものです。しかし、この方法での生産量は少ないのが通例です。コノスルは、この葡萄を優しく扱う方法で大量生産を行うため、新しいテクノロジーを導入しました(ピノ・ノワール専用セラーの建設)。導入のためのキーはイノベーション(革新)でしたが、ベースとなったのは古代から続くワイン造りの技術でした。ちなみに、この難しい葡萄を理解したことの副産物として、ヴィオニエやソーヴィニヨン・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、リースリングやコノスルが手がけるその他様々な品種の扱いが簡単に感じるようになったということです。

難しいのは葡萄の扱い方だけではありません。地勢と気候の組み合わせがピノ・ノワールにぴったりな場所を探さなければなりません。しかし、幸運なことに、これはチリでは難しい問題ではありません。

「チリは葡萄栽培のパラダイスです。天候に恵まれ、春から夏にかけては雨が降りません。沿岸部は冷涼でフレッシュなワインにはぴったりですし、暖かい内陸部では果実味のしっかりしたワインを造ることができます。」

チリの多様な気候と地勢は、ワインメーカーに多くの恩恵を与えています。収穫期を迎えた今、その興奮をはっきりと感じることができます。

コノスルの4人のワインメーカーのうちの一人、マティアス・リオス氏は語ります。「私たちは本当にワインに対して情熱的です。ある時には、わずか0.5%のブレンドをどうするかについて、何時間も議論したこともあります。そうした過程を経て、今までに造ったものを超えるワインが出来上がるのです。」

Photograph: Santiago Soto Monllor

※このコラムは、2016年4月29日付でイギリスの大手一般新聞「ガーディアン」に掲載された記事(無料)を本ウェブサイト向けに訳したものです。元記事はこちら

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