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チリの可能性を示したコノスルのピノ・ノワール(2016年5月「ガーディアン」掲載記事訳)

アドルフォ・フルタード氏は、ピノ・ノワールの生産量で世界最大級を誇る生産者のチーフワインメーカーになろうとしていたわけではありませんでした。アドルフォ氏はカサブランカ・ヴァレーの農家に生まれ、実家の農場を手伝っていました。実家は牧場で牛乳を生産しており、海に近く冷涼なこの地域に葡萄を植えようなどと考える人はいませんでした。

多くの若いチリ人と同じように、彼もチリの中心部サンチアゴの高校・大学へと進みました。「私の父と祖父は農家でした。私は子供でしたので、自分がやりたいと思うことに何一つ疑いを持ちませんでした」と、アドルフォ氏は当時を振り返ります。大学在学中に、地元であることが起こります。地元のカサブランカがチリで最も将来有望なワイン産地、冷涼地域産ワインの新天地として脚光を浴びたのです。

「それは偶然でした。大学にいた頃にワインの新天地としてカサブランカ・ヴァレーが台頭し始めたのです。私はどんな時もカサブランカを愛していたので、それでワイン造りを専門にしようと決めたのです」。そのわずか数年後、アドルフォ氏は新たに誕生したばかりのワイナリー、コノスルにチーフワインメーカーとして就任しました。それから19年、彼はコノスルのチーフワインメーカーであり続けています。

ワイナリーのすぐ近くには自社畑があり、チリでは伝統的に育てられているソーヴィニヨン・ブランとカベルネ・ソーヴィニヨンが主に植えられていました。しかし、その他にも興味深い品種がありました。1968年に植えられた古いピノ・ノワールでした。チリで初めて植えられたピノ・ノワールです。ここから、アドルフォ氏のピノ・ノワールに対する愛憎が始まったのです。

「最初は悩みの種でしかありませんでした」。彼の不満はワインメーカーに共通のものです。ピノ・ノワールは、栽培も醸造も非常に難しいのです。「色づきは悪く、醸造も難しく、理解不能でした」。

彼は諦めようとしませんでした。ブルゴーニュのピノ・ノワールの達人(ドメーヌ・ジャック・プリュールのマルタン・プリュール氏)からのアドバイスを得て、また、この繊細な葡萄のための新しいテクノロジー(マルタン・セラーピノ・ノワール専用セラー)を導入し、アドルフォ氏はピノ・ノワールの性質を見極めたのです。多数の賞を獲得し、コノスルは今日、チリのベスト・ピノ・ノワールのひとつになり、世界中で称賛されるようになりました。

「ピノ・ノワールをつくることは、今では最も理解していることで、最も楽しんでいることでもあります。20年前は、オシオのようなピノ・ノワールをつくるなど夢にも思いませんでした。0から世界最大の生産者になったのです。本当に誇りに思います。このワインを通じてチリを表現出来ていることが大好きです」。

アドルフォ氏の情熱は、チリの魅力を紹介することにも向けられています。「チリほど多様性のある国を見つけるのは簡単ではありません。幅が狭いので、すべてのものがすぐ近くにあるのです。チリを訪れた人におすすめしていることがあります。ぜひ、アンデス山脈へ行ってスキーをしてください。沿岸部を訪れて素晴らしいシーフードを食べてください。世界でもっとも乾燥した砂漠のあるオアシス、サン・ペドロ・デ・アタカマを訪れて、南へ向かって、パタゴニアの湖を訪れてください」。

チリの自然はワインにも反映されています。太平洋沿岸の冷涼さとチリの太陽は、ピリッとしたフレッシュさや明るい柑橘系のソーヴィニヨン・ブランを生んでいます。スパイシーで、ミントのニュアンスがある、しっかりしたカベルネ・ソーヴィニヨンは、標高の高いアンデスの山林を思い起こさせます。暖かく、肥沃な土地であるヴァレ・セントラルは、ジューシーで熟したカルメネールや、トロピカルで桃のような風味のあるヴィオニエを表現しています。そしてもちろん、ピノ・ノワールもあり、チリの多様な自然のコントラストや、別世界のような美しさを映し出しています。

Photograph: Santiago Soto Monllor

※このコラムは、2016年5月6日付でイギリスの大手一般新聞「ガーディアン」に掲載された記事(無料)を本ウェブサイト向けに訳したものです。元記事はこちら

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